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最高裁判所第一小法廷 昭和24年(れ)2245号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人保坂治喜上告趣意第一点について。

しかし旧刑訴の下における控訴審は、純然たる覆審手続であるから、第一審における所論の主張が控訴審においても当然主張されたと認めることはできない。そして、原審では、被告人及び弁護人からかゝる所論の主張が爲されたことは認められないから、原判決がこれに対する判断を示さなかったからといって、判断遺脱の違法あるとはいえない。論旨は、それ故に採ることはできない。

同第二点について。

仮りに、所論のごとき場合は検事の附帶控訴が無効であるとしても、本件では原審はこれを採用せず、從って判決に影響を及ぼさなかったこと明白である。所論は、それ故に上告適法の理由として採ることができない。

同第三点について。

しかし、所論公判調書の記載で、原審が具体的に証拠調をした証拠品が何であったかを窺い知ることができるし、ことに、同公判調書によれば、原判決の証拠としている刺身庖丁については特に被告人にこれを示し、被告人は本件犯罪の供用物件であると述べている。されば、原審の手続には所論の違法は認められない。

弁護人関谷寛上告趣意について。

所論第一点は、要するに原判決の事実の誤認を主張するものであり、また、同第二点は原審の裁量に属する情状の酌量、刑の執行猶予を求める等結局量刑の非難に帰するから、いずれも上告審適法の上訴理由として採り得ない。

よって旧刑訴四四六条に從い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 齋藤悠輔 裁判官 真野 毅 裁判官 岩松三郎)

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